「直樹を失って」 旭川市 近藤 早苗

 今朝ネ、直樹の夢を見ました。パタパタと走って来て、あの頃と同じように私のお腹の上に乗って来たので「アッ、直樹だ」と思い、ギュッと抱きしめてとても幸せでした。

 直樹は、平成9年8月29日に6歳と7ヶ月で交通事故によって亡くなった私の次男です。相手は大型ダンプで、直樹は塾に行く途中の自転車でした。
 死因は脳挫傷でした。身体にはほとんど傷もなく、まるでねむって居るようでした。でもその眠りは二度と覚める事はなく、あとの数時間は直樹の命が消えて行くのをただ見守る事しかできませんでした。不思議な数時聞でした。

 直樹を失って、様々な変化が起こりました。直樹に直接「塾に行く様に進めた」祖母(義母)が自分自身を責めて、事故のあった土地には辛くて居られないと言って引っ越してしまいました。ただ1人の弟を失った長男は、以前にも増して甘えっ子になり、1人で居るときは「つまらない」を連発します。事故の前夜、2人で楽しく遊んでいた姿が焼き付いて離れません。又、私には今だに直樹の行っていた公園に行けませんし、好きだったマーボー豆腐も作れなくなりました。

 以前、よく人は「○○のことは1日も忘れた事がなかった」などと言う言葉を耳にし、そんな事あるかしら? と思っていましたが、直樹を失ってそれは本当だと判りました。特に、夜寝るときに思い出しては涙が出て眠れなくなり、不眠症状態になったこともあります。一生抱えて生きて行くのはもう辛くてイヤだと、私はサッサと死んでしまいたいと何度も思い、その度に、遺される子供のことを思って頑張り、いつかは直樹に会えるのだからと自分に言い聞かせています。

 交通事故は、悲劇です。一生続く傷を心に刻み付けています。今、私は車の中に直樹の写真を乗せて運転をしています。今日の被害者が明日の加害者にならないように、直樹の顔を見ては安全運転に心掛けています。
 私のお友達もお弟さんを事故で失っています。
 こんな思いをする人々が1人でも減る事を心から願ってなりません。

 私は、今日も寝る時に直樹に話しかけます。「夢でいいから出て来てネ、お母さんは直樹に会いたいの」と・・・。