「B子ちゃんが逝く」 札幌市 T・N
平成9年6月中旬、青葉、若葉の芳香ただよう薄暮時の事故である。
電話が鳴り響く、直ちに受話器を取る。孫の両親からである。その声は、途切れ、途切れで震えているので、普段の様子ではないと思った。
「・・・子が死んじゃった、車に轢かれて、・・・」後は言葉にならない。無理もない。物わかりのいい可愛い一人娘。幼稚園2年目になる幼児である。
私達祖父母は現地に走った。ただ、生きていてくれよと願いつつ、命だけはと・・・。しかし、無情にも願いは打ち消されてしまった。B子の体は冷たかった。スイスイと眠っているようで、無邪気な顔である。傍らで両親は放心状態でわが子を見守っていた。
私達は、頬にふれ、小さな手を握りしめ、名前を呼ぶも声はない。ただ、呆然として、悲しく涙も出ない。次第に時間が過ぎるにしたがい、涙がドーと溢れ出て、B子の体に泣き崩れた。不注意一秒にして家族との幸せが水の泡となってしまった。
すこし時間を置いて原因を聞いてみた。自宅前でマイカーで帰宅した家族が車庫入れ中に安全確認しないで後退したために、押し倒され轢かれたとの事である。基本的なミスで残念でならない。
すぐに近くの病院に行くが時間外で受診されず、次の病院でやっと受診していただき、親身な応急処置をされたが、その効果も空しく天国の人となった。診断名は、脳挫傷、胸部圧迫である。
幼稚園では、3日前に楽しい運動会が終わり翌日は遠足が予定されていたが、喪に服することで、順延されたようです。そして、告別式では大勢の園児にB子を見送っていただいた。いまだに、可愛い仕草が頭から離れない毎日である。
ドライバーの皆さん、他人事ではありません。一瞬の不注意が死亡事故につながりかねません。運転するときは、車の回りの安全確認とともに、歩行者にも車にも、思いやりのある慎重な安全運転で、交通事故死ワーストの汚名返上と価値ある車社会にしていただきたくお願いします。