「あの悪夢の出来事」 上川町 小西 めぐみ
あの悪夢の出来事から4度目の春を迎え、貴宏は今頃どう過ごしていますか。こちらは、桜も咲きやっと春がやって来ました。
季節が変わった今でも「ただいま」と玄関を開けて帰って来るような気がし、ふっと目頭が熱くなります。
今でも時折、貴宏の同級生はお参りに寄って近況報告をしてくれます。仏壇にはいつも沢山の花、そして食べ過ぎじゃないかと心配するほどの果物、お菓子がお供えしてあります。
小さい頃はよく、お供えしてあるものを取り合いしてまで食べていましたね。取り合いする相手がいない今は何か気が抜けて、とても寂しいです。一つの物を一人で食べるより、たとえそれが半分になっても一緒に食べるのが、どんなにおいしかったか、今更ながら身にしみて実感しています。
あれから4年・・・・まさか、あの悪夢の出来事、友達の車に同乗し、他の子は、かすり傷程度だったにもかかわらず貴宏だけがと思うと、悔やんでも悔やみきれない気持ちで一杯です。
いつだったか「僕は病気では死なないよ。死ぬときは事故で死ぬ」と言ったあの言葉。まるで判っていたかのように、その時は何言っているのと聞き流してしまったこと。何一つ姉らしい事をしてあげられなかったこと。貴宏と交わした言葉が未だに思い出せず後悔しています。
みんなそれぞれに年を重ねていくのに、貴宏だけがいつものあの笑顔で変わらないのが、とてもくやしいです。でも、いつも見守ってくれていると思うと、少しは気持ちがなごみ、貴宏の分まで生きていこうと前向きに考えられるような気がします。きっとこの気持ちは、自分の身近で経験した人にしか判らないのかもしれない。けれど、沢山の人達がこんな辛い思いをしてほしくない。そう思うとなんとも言いようのない熱い思いがまたこみ上げてきます。
貴宏の姉は、立ち直るには、まだ時間がかかりそうです。見捨てないで見守っていて下さい。
姉より