「今も忘れない五年前の夏、その時息子は・・」
札幌市 S・S

 5年前はとても暑く好天が続いた年、その日も晴天でした。
 5人家族の平凡な生活は、1台の大型車によって奪われました。地獄の日々の始まりでした。
 高校生になったばかりの息子は、自転車で登校中、交差点を左折をした大型車に巻き込まれてしまいました。救急車で近くの救急病院に収容されましたが、手術が必要という事で外科に転院、しかし、その病院でも手術されることなく症状は悪化していくばかりのなか、やっと総合病院へと転院されましたが、すでに遅く息子は息を引き取ったのです。

 現場は、とても見通しの良い交差点です。車体の長い11トン車は交差点を左折するとき、中央線をはみ出してしまった為に、対向の車に気をとられ左の確認をしなかったという。安全であるはずの横断歩道という存在を忘れていたのです。安全であるはずの横断歩道を渡っていた息子は、巨大な凶器に変わった車によって夢ある命を奪われたのです。
 一瞬の出来事が、希望に満ちた息子の全てを奪いました。予想もしなかった突然の死、何故、こんなことになったのか、
 そして、病院の措置が早ければ・・・人の命を奪った加害者の刑がこんなに軽くていいのか・・・・ どうしても納得ができる答えが見つかりません。
 ただ、加害者を憎み、医者を憎みました。
 それと共に、私自身が母としてやるべき事をやらなかった事への後悔の念で一杯です。

 自然、動物を愛し、誰からも信頼され、期待されていた息子の死は、残された私達家族の人生をも変えてしまいました。3回忌の法要を終えて離婚、私は今、子供達との時を大切に穏やかに暮らして生きたいと思っています。