「幸福な一家を崩壊させた交通事故」
美唄市 宿南 さゆり

 私の妹(30歳)は、夫(32歳)と長男(2歳)、年老いた母の4人で幸福な家庭生活を送っていました。
 ある日の朝、妹はいつも通り会社に向かう夫を笑顔で見送りました。
 その笑顔が、30分後には・・・、妹の夫は対向してきた大型車に正面衝突されて即死、会社からの連絡で妹が病院に駆けつけた時には、無情にも冷たくなっていた夫、「お父さん~、お父さん~」と呼べど、叫べど返事をしてくれませんでした。

 幼い息子を抱え、悲しみを必死に堪えてやっと夫の一周忌を終えこれから頑張ろうとしていた矢先、息子が高熱で倒れ、岩見沢市立病院から札幌医大病院に転送され、医師の治療を受けましたが、意識不明の状態は戻らないまま、家族のどんなになっても「生きてさえいてくれれば」と言う願いも空しく、なんの言葉もなく半月あまりで息を引き取ったのです。病名は、風邪による脳炎でした。

 妹は、相次ぐ悲しみと幼い息子を1人で父親の元へ旅立たせる事を不憫に想い、天国で3人の幸福な家庭を夢見て、その日のうちに、自らの命を絶ってしまったのです。たぶん、息子が息を引き取ったら自分も後を追う覚悟を決めていたのかもしれません。
 夫の事故死からの悲しみに続いてのこの半月間、どんな気持ちで過ごしていたかと思うと胸が詰まる想いです。
 親子別々の柩に入れるのも不憫と思い、母の懐にしっかりと子供を抱かせて1つの柩に入れ、父親の元へ旅立たせてやりました。

 今、年老いた母が1人取り残され、すがる子供もなく仏にすがる毎日を送っている事と思います。
 運転者の一寸した不注意から幸福な一家を崩壊させるのが、交通事故の悲惨さです。
 どんなに泣いても、相手の運転者を憎んでも、幸せは戻って来ません。
 車を運転する1人1人の人が、安全運転に心すべきだと思います。