「父と母へ」 旭川市 長瀬 初美
ある日突然に、私の父と母は逝ってしまった。
平成10年2月28日、父と母が乗っていた軽トラックに、一時停止を無視した乗用車がぶつかって来たのです。母は即死。父は手術中に亡くなりました。
昨日まであんなに元気にして、孫の入学を楽しみにしていたのに、そして、妹の結婚式だと喜んでいたのに、そんな父と母は突然いなくなってしまったのです。
今まで幸せだった生活から、一挙に地獄に落ちたような気持ちでした。人生が変わったのです。
被害者となって一番辛い事は、加害者の方の顔を見ることです。恨んではいませんが、許せないのです。顔を見る度、「この人が、私達を変えたんだ、この人のせいで、父母が死んだんだ。」と思うと、胸が苦しくなり、涙が止まらないのです。四十九日以降は「もう、来ないでほしい」と保険会社の人を通じてお断りしました。もう父や母は戻ってはこないのです。
加害者の方も、一生この罪を背負っていくのでしょう。「なぜ、こんな事になってしまったのか」、「なぜ、父と母の車にぶつかったのか」、「なぜ、私の父と母が死ななければならなかったのか」・・なぜ・・・なぜ・・・・。
誰も答えを出してくれる訳はありません。
その後、この一年は、とっても大変な事ばかりでした。私が病気になったり、農家をしていた父母の後始末、また、家を出なくてはならなくなったことや保険会社との示談の話し合いなど、とても辛いことばかりでした。
もっと、もっと、お父さん、お母さんと話したかった。親孝行だってしたかった。何もしてあげれないままで、ごめんなさい・・・お父さん、お母さん・・。交通事故のニュースを見るたびに、「被害者と加害者、そしてその家族は、悲しい思いをするんだ」といつも胸が痛むのです。