「自動運転車」走行への規制緩和は危険 ~自動配送ロボットの歩道走行問題で、交通被害団体連名の「意見書」を提出~

意見書提出に至る経過概要

1 政府(警察庁)の検討会の一つである「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」において、メーカーから要望があったとみられる、自動配送ロボットの公道走行がテーマの一つとなり、2020年7月以来検討がされています。

警察庁 各種有識者会議等

https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html

の「多様な交通主体の交通ルール等の在り方」のページ参照

2 2021年2月25日、上記検討会を主管する警察庁交通局交通企画課から、当会も加盟する「犯罪被害者団体ネットワーク(ハートバンド)へ、被害者団体からの意見を伺いたいとの依頼がありました。

3 依頼を受けて、北海道交通事故被害者の会の前田(ハートバンドの代表)が、交通被害8団体(ハートバンド加盟20団体中)と協議し、意見書案を作成。3月26日までに、全8団体の賛同を得て、3月29日、後段の意見書を警察庁交通局へ提出しました。

4 意見書を受け取った交通局交通企画課からは、「御意見の提出を頂き、ありがとうございました。頂いた意見も踏まえつつ、道路交通の安全をしっかりと確保してまいりたいと思います。」との返信がありました。

当会要望書より

なお、この件、当会としては、会の要望事項6-3項の後段

「自動運転車」のような、一部の「不確かな」クルマに幻想を与えるのではなく、クルマを決して危険走行させることがないように、ペダル踏み間違い時の加速抑制装置や衝突予防装置、非常停止装置などの装着義務化、道路ごとの制限速度に応じて自動で速度制御を行う技術(Intelligent Speed Adaptation)の実用化など、全てのクルマを対象にした安全運転支援施策を急ぐこと。

を基本とし、歩行者の安全確保のために、今回の「規制緩和」は認めるべきではない、との立場で対応しました。

提出した意見書

提出した意見書は以下の通りです

自動配送ロボット問題意見書(PDF)

2021年3月29日

警察庁交通局 御中

佐賀犯罪被害者・交通事故被害者遺族の会自助グループ「一歩の会」 代表 志岐 洋子
飲酒ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会
共同代表 高石 洋子・佐藤 悦子
NPO法人KENTO 代表 児島 早苗
NPO法人交通事故後遺障害者家族の会 代表 北原 浩一
交通事故調書の開示と公正な裁きを求める会 代表 白倉 裕美子
一般社団法人交通事故被害者家族ネットワーク 理事 上田 育生
TAV交通死被害者の会 代表 田畑 耕一
北海道交通事故被害者の会 代表 前田 敏章
(※団体名は五十音順)

自動配送ロボットの公道(歩道)走行について(意見)

 私たちは、全国の犯罪被害者団体がゆるやかに連携している「犯罪被害者団体ネットワークハートバンド」(現在20団体)の中の交通被害者団体です。
 私たちの大切な家族は、本来道具であるべきクルマが凶器のように使われた交通犯罪によって、かけがえのない命や健康を奪われました。憲法13条、25条を基盤とする「安心して生きられる権利」が日常的に侵されているのは、経済効率優先、人命軽視の麻痺した「クルマ優先社会」であると痛感しています。私たちの共通の願いは、「こんな悲しみ苦しみは私たちで終わりにして欲しい」であり、犠牲を無にしないために、交通死傷ゼロを求め必死に活動を続けています。
御庁交通局が「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」(以下「検討会」)を開催し検討されている、自動配送ロボットの公道(歩道)走行問題について、被害者団体としての意見を提出させていただきます。

【意見】
 メーカー等から要望(注1)があったとされる、自動配送ロボットの公道(歩道)走行の許可条件緩和は、「交通の安全」の観点から行うべきではないと考えます。無人の自動運転車の公道走行につながる規制緩和には強く反対致します。

【理由1】
 現状においても、歩道上の歩行者(中でも幼児、児童、高齢者、病弱者、視聴覚障がい者の方々など)の絶対安全が担保されていない中、さらなる危険因子ともなる自動ロボットの走行認可のために規制緩和を図ることは、道路交通法第1条の目的「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り」に反します。
 警察庁交通局が指摘されているように、自動配送ロボットについての「現在の技術レベルで懸念される点」(注2)の中の特に下記4点は新たな危険因子ですので、許可条件の緩和は、交通死傷被害ゼロの願いに逆行します。

  • 歩行者が、ロボットを避けるため車道に降り、自動車と衝突する
  • 悪天候時にセンサー等が正しく作動せず、歩行者等の存在を正しく認識できないケース
  • ハッキングされ、暴走した場合の危険
  • 1人で複数のロボットを監視・操作している際、あるロボットについて対応が必要になった場合に、他のロボットについて監視・操作できない

【理由2】
 なお、私たちは、自動配送ロボットの公道(歩道)通行について、以下の3点も「懸念される点」と考えますので、このことからも、許可条件の規制緩和に反対です。

〈2-1〉
 モーターの大きさ等から「自動車」と定義される「自動ロボット」の歩道通行許可については、歩道という基本概念改変の問題です。道路交通法第1条の目的「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り」の「安全」を第一義として、別途独立して検討すべき大きな問題であると考えます。

〈2-2〉
 上記と同様に、この度の自動ロボットの公道走行問題は、広く、無人の自動運転車の公道走行問題ですので、本「検討会」だけで結論を出せる課題ではないと考えます。
 なお私たちの団体の中では、AIなど未知の技術開発が前提となる自動運転車が必ず実現するという「幻想」にとらわれず、被害ゼロのため、今可能な抜本施策(この中に安全運転支援車も入ります)を総合的・全面的に推進するべきではないかと求める団体が多数です。現段階で開発されている自動運転車は、限定された専用空間や用途のみで実用が想定される技術であると認識しております。

〈2-3〉
 メーカー等から要望が出され検討されているロボットの、速度(最高6km/h)、大きさ(115×65×115㎝)、重量(120kg)は、歩行者にとって極めて危険な衝撃力を与える、速度であり、大きさであり、重量です。形状・材質についても、人との接触により、重大な身体損傷を引き起こす危険極まりないものです。(注3)
 これほどのものが、例えば人の上に倒れたときの破壊力を正視しないメーカーに、許可を与えるようなことはあってはならないことです。
 そして、現在の歩道上での危険回避は、相互コミュニケーションが重要な手段になっていると思いますが、無人ロボット通行は、この安全担保の重要な手段を著しく制限するのですから、この点でも、極めて重大な危険因子に成ると考えます。

〈注1〉
・交通局資料「現状」より

  • モーターの大きさ等に応じ、自動車等に当たる
  • 公道(歩道)を走行するためには、特別の許可を受ける必要がある
  • 許可を受けるためには,ロボットの性能や,走行場所が審査される

・交通局資料「メーカー等からの要望」より

  • ロボットの近くで監視する人を置かず、遠隔から1人が複数のロボットを監視・操作すればよいこととしてほしい
  • ロボット本体の安全性や、使用する者・場所について、事前に規制しないでほしい

〈注2〉
・交通局資料「現在の技術レベルで懸念される点」より

  • 歩行者等をスムーズに避けることができず、速やかな後退等もできないため、歩行者がロボットを避けるために車道に降りてしまい、車道に降りた歩行者が自動車等と衝突する
  • 通信途絶により横断歩道等の道路上で立ち往生してしまう
  • 悪天候時にセンサー等が正しく作動せず、歩行者等の存在を正しく認識できなかったり、横断歩道等の道路上で立ち往生したりしてしまう
  • 道路横断中にセンサーが周囲の横断歩行者等を感知して頻繁に停止した結果、長い横断歩道を青信号の時間内に渡りきれない
  • 仮にハッキングされれば、暴走したり、車道に飛び出したりする
  • 1人で複数のロボットを監視・操作している際、あるロボットについて対応が必要になった場合に、他のロボットについて監視・操作できない
  • 〈注3〉
     運動エネルギーは、質量と速度の2乗に比例するので、120kg、6km/hの配送ロボットの衝撃力は、体重60kg、速度3km/hの大人の8倍、30kg、3km/hの児童の16倍です。